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百見は一食に如かず

  • 2019年4月8日
  • 読了時間: 5分

更新日:5月17日


看板料理は「ミソ田楽」


深夜0時。スマホを開いたあなたが、この文章に辿り着いてしまったその時点で既にもう負けだ。今から紹介するのは、会津若松にある囲炉裏田楽の名店「満田屋」。


警告しておく。この店の“焼ける音”を想像した瞬間、胃袋が終わるということを。店に入ると、まず襲ってくるのは炭火の香り。いや、“香り”なんて生ぬるい。味噌が焼ける匂いが、脳を直接殴ってくる。


白い伝統的な日本家屋の店があり、屋根には「満田屋」の看板、黒い暖簾に「田楽」「味噌」の文字。曇り空が背景。

会津の郷土料理「田楽」を百年以上守り続けてきた、老舗中の老舗。重厚な蔵造りの建物は、まるで時代劇の中に迷い込んだように感じ、無抵抗になった私を誘い込んでくれるのだ。


会津若松で「絶対に並ぶ価値がある店は?」と聞かれたら、地元の人も観光客も、きっと間違いなく同じ名前を挙げるだろう。それが「満田屋」なのだ。


正直、観光シーズンともなれば店先には行列となり「田楽で並ぶの?」と思うかもしれない。


残念ながらその浅い考えは、一歩店内に入った瞬間に吹き飛び卒倒さえするかもしれないのだ。


〒965-0042 福島県会津若松市大町1丁目1−25

株式会社 満田屋 ホームページ:https://www.mitsutaya.jp/


百見は一食に如かず

囲炉裏から立ち上る炭火の炎、じゅうじゅうと焼ける味噌の音。香ばしさに包まれた空気だけで「もう止めてくれ」・「それ以上は胃が可哀そうになる」と目と鼻と耳を両手でふさぎたくなる。


囲炉裏の上では、串に刺さった豆腐やこんにゃくが、じっくり炙られている。「ぷくっ……ぷくっ」……と味噌が膨らみ、焦げ目がつき始めた瞬間、空腹中枢は完全に崩壊。


創業以来守り続ける自家製味噌は、「甘み」・「塩味」・「コク」・「香り」の深さが別格。ただ塗るだけではない。


会津の風土、雪国の知恵、そして代々受け継がれてきた職人技、そのすべてが一本一本に宿っているだ。


囲炉裏で団子と米菓子が焼かれている。手前に4種類のタレが四角い容器に入っている。木の台と道具が見える。

まず、視線を奪うのが目の前の囲炉裏で炭火焼だ。チリチリパチパチ。手前には数種類の味噌が並んでいる。


じっくり焼き上げて、食材の芯まで丁寧に仕上げてくれるから「出来上がるまで時間が掛かりますがよろしいですか」と伺いがある。


満田屋の創業は江戸末期。もともとは味噌蔵として始まり、長い年月をかけて会津味噌を育て続けてきた。



厳しい冬を越えるため、保存食文化が発展した会津では味噌は暮らしそのもの。その自家製味噌をもっと美味しく食べてもらいたい――そんな想いから生まれたのが「満田屋の田楽


豆腐には甘味噌、こんにゃくには山椒味噌、しんごろうにはじゅうねん味噌――素材ごとに最適な味を使い分ける徹底ぶり。これが、とにかく反則級に旨い。


満田屋の食堂風景と味噌田楽の串料理。和風の内装で提灯が飾られ、温かい雰囲気。左に「満田屋」の文字、右に説明文あり。

特に「しんごろう」を食べずに帰るといった「判断ミス」は、本当に危険と言わざる負えない。


米を串焼きにして炭火で「パリッ」と焼き上げたのち、そこへ熱々のじゅうねん味噌を塗りたくる。もう一度言う。“熱々の味噌を塗りたくる”。


しかも囲炉裏焼きだから香りが別物。機械では絶対に出せない“炭火の魔力”があることに気づいた時にはもう遅い。「もう一本頂くとしよう」が無限ループになる。


焼けた味噌がじわっと泡立ち、香ばしい煙が立ち上がる。その瞬間、米の甘みと味噌の甘じょっぱさが融合して完全に理性を失う。とても危険だ。もはや“飯テロ”という言葉では全然足りない。


木製のテーブルの上に、白い陶器皿が置かれ、味噌がかかった2枚のこんにゃくが串に刺さっている。和風の趣。

さらに恐ろしいのは「こんにゃく田楽」だ。「こんにゃくで感動するわけない」と思っている人ほど危ない。五感すべてで胃袋を破壊しに来る。


ここに断言する。まだ食したことがない人に対して、会津生まれの味噌を纏った熱々のこんにゃくを頬張った瞬間、まず間違いなく日本酒を注文したくなる未来予想図が描けるのだ。


囲炉裏端では、旅人同士が自然と会話を交わすことがよくある。炭火を囲み、焼ける音を聞きながら食事を待つ時間さえ、ご馳走。


現代では失われつつある「食のぬくもり」が、ここには残っているのだ。観光地の食事というより、“会津の時間を食べる場所”。それが「満田屋」。


白い皿に乗った焼き豆腐の串。豆腐は金色に焼かれ、美味しそうに見える。シンプルな和風のデザインの皿が背景。

次々と注文した逸品が目の前に並ぶ。こちらは満田屋菜種油で揚げた、自家製豆腐の生揚(山椒味噌) 


ピリッと山椒が効いていおり、日本酒などのお酒を飲む人には欠かせない絶品となることは間違いようがない。


豆腐を食しているのだが、味噌を食しているとも思えてならない。これこそ相思相愛と言える相性なのだ。


陶器の皿に串に刺された2つの焼き椎茸が置かれている。皿は白地で茶色の模様があり、テーブルは木製。

目が満足し、鼻が満足し、舌が満足するなどといった順番はない。一度に押し寄せてくるこの感覚をぜひ味わってみてほしいと思う。


会津産のシイタケは醤油タレで、口の中の味噌風味を一回リセットする。さっぱりしていて見た目より肉厚の触感が食べたものにしかわからないのが残念で仕方がない。


焼き餅と海苔巻き餅が白い陶器皿にのり、木製のテーブルに置かれている。静かな食事シーン。

次にやってきたのは、つきたて餅(甘味噌)と一起餅(醤油タレ)のコラボレーションだ。


この感じがまたたまらなく良い感じなのだ!日本に産まれてよかった、いや会津という歴史があって良かった、いやいや味噌をここまでに育ててくれた「満田屋」と出会えてよかったと思う瞬間なのだ。


白い皿にのった味噌田楽串、焦げ目が香ばしい。木製テーブルの上で温かみのある雰囲気。

続いて、会津産の里芋(甘味噌) シャリッシャリの中に味噌が絡んで旨し!なのだ。


丁寧に且つ厳選された食材を丹精込めて一本ずつ串に刺す。見た目とその工程とを比較すれば実にわかってもらいずらいのであるが、これを食す行為からそれは想像を可能にすることができる。


串焼きとは工程であり、演武であり、観方であり、食べ方である。


焦げた焼き味噌を塗った野菜串が白い皿に置かれている。木製のテーブルの上。温かい風合いと香ばしさを感じる。

最後に、「しんごろう」と言うご飯の半分潰した練り物(じゅうねん味噌)と身欠にしん(山椒味噌)で締めくくらせていただいた。


気づけば、行列に並んでいた時間なんて忘れている。“会津の旨さ”をここまで直球で叩き込んでくる店はそうはない。


もし会津若松を訪れるなら、鶴ヶ城だけで帰ってはいけない。冬の冷たい空気の中、湯気を立てる田楽を頬張れば、きっとこう思うはずだ。


味噌って、こんなに旨かったのか」満田屋は、その数少ない“危険な店”なのだ。


もちろん、これだけではない。ほかにもたくさんの串物が用意されているのだ。写真では伝わらないのが残念で仕方がないが、是非一度食されてみられよ。百見は一食に如かず。


きっと私の言っていることの半分くらいは解って頂けるのではないかと思う。そして深夜にスマホで検索してはならないことを注意しておきたいと思う。



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