岩手に来たらこれっしょ ぴょんぴょん
- 2019年4月17日
- 読了時間: 4分
更新日:5月22日
盛岡冷麺
ぴょんぴょん
夜の盛岡は骨の髄まで冷たい風がアスファルトを舐め回してゆきます。雪舞い踊るってやつです。
駅前を抜けて吐く息が白く濁る頃になると、無性に“熱”を欲しはじめます。通常ならホットコーヒー片手に“鍋”でも囲みますかってなるのですが、ここは冬でもアレです。アレ。
そうです。盛岡の胃袋を何十年も支配してきた「冷麺界の無法者」と言わしめ、その名を全国区へ叩き上げた店「ぴょんぴょん舎」に到着です。

日中は念願かなって岩手県のお城を巡り、少し歴史に触れて感無量でしたが、いかんせん歩き回ってお腹が悲鳴を上げていました。
しかしそんなお腹ペコペコ中でも東北の旅っていいもんだなぁって感じちゃうんですね。本当です。最高!そんなことを思いながら、ここに到着するまでの間ずっと悩んでいたことがありました。
そうなんですよ。岩手県と言えば「わんこそば」――だけじゃないんです。岩手三大麺として名高く盛岡冷麺や盛岡じゃじゃ麺、チータンタン、エトセトラで思案中。
ん~悩む。胃が二つ欲しい。いやいや三つ四つ欲しい。と悩んでいました。他にも悩んでました。それは・・・。
入店して「すみません、冷麺だけの注文でもいいでしょうか」って聞いたぐらい焼き肉店の雰囲気でしたから。現地の人は焼き肉屋で冷麺だけ食べるのが当たり前だとか。
〒020-0142 岩手県盛岡市稲荷町12−5 ぴょんぴょん舎
焼肉を食べに行ったらメニューに冷麺ってよくありますよね。私も好きな方なので良く注文します。がっ、がですよ。岩手の本場、盛岡冷麺を食べたら、他の所では食べられなくなるので要注意。
盛岡冷麺のルーツは、戦後間もない時代にまで遡ることのなります。朝鮮半島から渡ってきた食文化が、北国・岩手の厳しい気候とぶつかり合い、独自の進化を遂げてきました。
ただ辛いだけじゃない。ただ冷たいだけでもない。コシの強さは暴力とも言えるほど他に類を見ない麺であり、その麺が牛骨の旨味を極限まで炊き出したスープに浸っているわけです。
箸を入れて、すくい上げる。既にこの時に感じるのです。「重い質感」ってやつです。そして、その面のつやっつやで、向こうが透けて見えるのではないかと思わせる透明感を。
そして、氷のような冷気の奥から突然牙を剥き襲い掛かってくるキムチの刺激がたまらなく、そうそうこれが盛岡冷麺だって思うんです。

だが、ぴょんぴょん舎の冷麺は、その中でも別格中の別格なのです。一口すすった瞬間に街の喧騒が全部吹き飛んで無音状態になります。あたりの音が消え失せてしまうんです。
麺はまるでヘビー級ボクサーのズッシリ重い「ストレート」を食らったかのようです。強烈な弾力で歯を跳ね返し、噛むたびに小麦の香りを叩きつけてくる感じ。
スープは透明な顔をしているくせに、裏社会のフィクサーみたいに奥深く見た目とのギャップは異常事態です。
牛の旨味、コク、甘みが静かに潜み、あとからじわじわ支配してくるあの感覚が脳裏に焼き付いて剝がせなくなります。
そして忘れちゃならねえのが「究極のキムチ」の存在です。麺がストレートなら、まるで見えないところから飛んでくる「フック」を食らった感じです。
辛味はナイフみたいに鋭いが不思議と下品じゃない。むしろ全体を完成へ導く“最後の引き金”役なんです。

気づけば額に汗を浮かべながら冷たい麺を夢中で啜っている私。「矛盾?」違う。それが盛岡冷麺の流儀というものなのです。
店内には焼肉の煙が漂い、肉の焼ける音が鼓膜を揺らすんですが、その中で冷麺を待つ時間というのは映画のワンシーンみたいに妙にサマになるんです。「俺は冷麺なんだ」と。
「盛岡の夜を知りたきゃ、洒落たバーより先にここへ来い」って言わせるほどいいお店です。観光ガイドには絶対載りきらない“熱”がここはありました。
この文章一つで、もし今あなたの腹が少しでも鳴ったならそれはもう負けを認めてほしいです。次の休みに盛岡へ向かう合図です。
そして「ぴょんぴょん舎」の冷麺を啜ることに何の引け目も負い目も問題もありません。冷たいのに魂は異様に熱くなる。そんな食物って、この世にそう多くはないはずです。
関西から来たと伝えると、店員の若い男の子が満面の笑みで「岩手はいい所です、ぜひまた今度も来てください」って。嬉しいじゃないですか。大阪に居て、そんなこと言ったことあったかなぁって反省。
来ます来ます、近かったらすぐ来たい。って思えるお店と味。ペロッと平らげてしまいました。
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